


クロード・ルルーシュ(監督)
1937年、フランス生まれ。幼い頃から映画に興味を持ち、報道カメラマンとしてキャリアをスタート。『男と女』(1966)が世界的に大ヒットし、カンヌ国際映画祭パルムドールやアカデミー賞 外国語映画賞など数々の映画賞に輝き一躍脚光を浴びる。以後、作曲家のフランシス・レイと組み、『白い恋人たち』(1968)、『愛と哀しみのボレロ』(1981)、『レ・ミゼラブル』(1995)、『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』(2015)など、スタイリッシュな恋愛映画や革新的な野心作を精力的に制作する。2019年には『男と女』のスタッフ・キャストが再集結した52年後の物語『男と女 人生最良の日々』を発表。2024年ヴェネチア国際映画祭では新作『Finalement (Finally)』を披露し、長年に渡り野心的な作品を撮り続けている監督に贈られる「監督・ばんざい!賞」を受賞。今も進化と活躍を続ける世界的巨匠である。
クロード・ルルーシュ監督公開記念コメント+予告編
男と女 -クロニクルズ-
2025年5月に開催された第78回カンヌ国際映画祭。イメージビジュアルとして発表された二枚組の公式ポスターには、両方ともクロード・ルルーシュ監督の1966年のフランス映画『男と女』の有名なワンシーンが映し出されていた。ドーヴィルの浜辺での抱擁の場面で、片方はジャン=ルイ・トランティニャン、もう片方はアヌーク・エーメの顔が見える。二種類のポスターが用意されたのはカンヌの歴史上初めてのこと。
「ダバダバダ…」という吐息混じりのスキャットが耳をくすぐる、フランシス・レイ作曲のテーマ音楽は一瞬にして日常を愛の風景に変える。政治の季節と呼ばれた騒乱の時代、この大人のラブロマンスはむしろ異彩を放ち、第19回カンヌ国際映画祭でグランプリ(現在のパルムドール)を受賞。1967年のアカデミー賞では外国語映画賞とオリジナル脚本賞を獲得し、世界中に大きな影響を与えた。
不朽の名作として知られる『男と女』だが、元々は低予算のインディペンデント映画だ。当時28歳のルルーシュは共同脚本、製作、撮影を兼ねて自主制作。少数精鋭のチームに制限して約4週間で撮影を敢行。圧倒的に洗練された“映像×音楽”の実験は珠玉の詩的効果を生み、ミュージックビデオの原点のひとつにもなった。いまこそルルーシュが編み出した華麗な映画の発明に酔い痴れよう。
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UN[#1]

『男と女』
(1966/102min)
フランス的な粋を凝縮した一篇の宝石。描かれるのは互いにパートナーを亡くした男と女の出会いだ。モンテカルロラリーに出場するレーサーの男(ジャン=ルイ・トランティニャン)と、映画業界でスクリプトの仕事を務める女(アヌーク・エーメ)。それぞれ我が子を連れた二人は、ノルマンディ地方の港町ドーヴィルの海岸で逢瀬を重ねる。カラーフィルムの予算不足を逆手に取ったモノクロームとパートカラーの交差。ソフトフォーカスを効かせた画面。美しいビジュアルに溶け合うテーマ曲を歌っている男性は、女の亡き夫 を演じるピエール・バルーだ。“映像×音楽”が一体となる表現はアメリカン・ニューシネマのヒントにもなり、MVやCMへと影響が伝播。日本でも高橋幸宏や野宮真貴など本作に心酔する著名人のファンは数多い。
